中学受験国語でよく出題される「比喩」の問題は、苦手とする小学生が少なくありません。本稿では、その「比喩」に注目し、どのように読み解いていくか...
親が見ているそばで音読させると、字はきちんと追えている。それなのに、なんとなく意味を理解できていないような気がする――そんな場面に、心当たりはありませんか。
「読めているのに、腹落ちしていない......」
物語文はそこそこ読めるのに、説明文・論説文になると、文章がすっと腹に落ちてこない。これは、多くのお子さんに共通する悩みです。とくに学年が上がって文章が抽象的になるほど、この差は開いていきます。低学年のうちは読めていたのに、5年生・6年生になって急に国語で苦労し始めた、というお子さんも少なくありません。
そして、こんなふうに声をかけてはいないでしょうか。
「ちゃんと集中して読みなさい」「もう一回、よく読んでみて」――。けれど、「よく読む」とは具体的にどうすることなのかを、子どもは教わっていないのです。ただ目で字を追うことを何度くり返しても、意味は頭に入ってきません。
これは特別な才能の差ではありません。読むときに「頭の中でやること」を知っているかどうかだけの差です。そこで、難しい文章も意味から理解できるようになる3つの裏ワザをご紹介します。SS-1の国語指導で実際に伝えている方法を、例文つきでお伝えします。
この記事では、次の短い説明文を例文として使います。まずはお子さんになったつもりで、ふつうに一度読んでみてください。
例文
道具は、人間の力を外へと広げるものである。人は、生まれつき持っている体の力だけでは、遠くを見ることも、重いものを軽々と運ぶこともできない。しかし道具を手にすると、話は変わる。望遠鏡は月のもようまで見せてくれるし、自動車は一日では歩けない距離を運んでくれる。つまり道具とは、人間が自分の体の限界をこえるために生み出した、もう一つの体なのだ。
いかがでしょう。「なんとなく分かる」けれど、「じゃあ要するに何?」と聞かれると答えにくい。多くのお子さんは、ここで止まっています。ここから、3つの裏ワザを順番に使っていきます。
そもそも、なぜ字は読めているのに意味が入ってこないのでしょうか。理由は、大きく3つあります。
そうだったの!? ①「全部を同じ速さで読んでいる」
そもそも、意味を理解しようとして読んでいない。だから、難しいところで立ち止まることもなく、具体例もきちんと理解した上で読み飛ばすわけではなく、結果として全部が同じスピードで流れていってしまうのです。
そうだったの!? ②「知らない言葉を、知らないまま通り過ぎている」
「限界」「普遍」といった難しい言葉を、意味を自分の言葉に直さないまま素通りしている。字面だけをなぞっているので、映像も意味も浮かばず、記憶に残りません。
そうだったの!? ③「頭の中が真っ白なまま読んでいる」
抽象的な話を、自分の知っている場面と結びつけずに読んでいる。文章と自分の経験がつながらないので、「わかったつもり」で終わってしまうのです。
つまり、意味が入ってこないお子さんは、頭が悪いわけでも、集中していないわけでもありません。①読む速さ、②言葉の置きかえ、③具体のイメージ――この3つの「読みながらやること」を知らないだけなのです。裏を返せば、この3つを身につければ、難しい文章もスッと入るようになります。それが、これからご紹介する3つの裏ワザです。
最初の裏ワザは、読むスピードをわざと変えることです。文章は、最初から最後まで同じ速さで読むものだと思われがちですが、これが大きなまちがい。ゆっくり読むところと、サッと流すところを分けるだけで、理解度がまるで変わります。
ではどこをゆっくり読むのか。ポイントは「抽象」と「具体」の見分けです。
抽象と具体
抽象......筆者の主張や、まとめの一文。ここが大事。ゆっくり噛みしめて読む。
具体......たとえ話や例。抽象を分かりやすくするための飾りなので、サッと流す。
さきほどの例文を、この目で色分けしてみます。青マーカーが「ゆっくり読む抽象」、色のついていないところが「サッと流す具体」です。
例文(速さの色分け)
道具は、人間の力を外へと広げるものである。人は、生まれつき持っている体の力だけでは、遠くを見ることも、重いものを軽々と運ぶこともできない。しかし道具を手にすると、話は変わる。望遠鏡は月のもようまで見せてくれるし、自動車は一日では歩けない距離を運んでくれる。つまり道具とは、人間が自分の体の限界をこえるために生み出した、もう一つの体なのだ。
望遠鏡や自動車のくだり(具体)は、サッと流して構いません。大事なのは、最初と最後の青いところ(抽象)です。ここだけをつなげれば、この段落の骨組みが見えてきます。
そして、抽象をゆっくり読んだら、段落の切れ目でいったん立ち止まり、「つまりどういうこと?」と一言でまとめてみます。読みっぱなしで先へ進まず、こまめに要約するのです。
この段落を一言でまとめると...
「道具は、人間の体の限界をこえさせてくれる、もう一つの体だ」
これができると、長い文章も「まとめの積み重ね」として頭に残ります。逆に、立ち止まらずに最後まで読み切ってしまうと、読み終えたときには最初のほうの内容を忘れている、ということが起こります。段落ごとに小さくまとめておけば、その心配がありません。
速さの切りかえ+立ち止まり
抽象はゆっくり・具体は流す。そして段落の切れ目で立ち止まり、一言でまとめる。このリズムが身につくと、長い説明文でも迷子になりません。
2つめは、難しい言葉を、自分がふだん使っている言葉に翻訳しながら読むことです。難しい文章は、たいてい言葉が難しいだけで、言っている中身は意外とシンプルなことが多いのです。
さきほどの例文には、「外へと広げる」「体の限界をこえる」といった、少しお堅い言い回しがありました。これを、お子さんの言葉に直してみます。
むずかしい言い回し → 自分の言葉に翻訳
「人間の力を外へと広げる」
→ 「人間にできることを増やしてくれる」
「自分の体の限界をこえる」
→ 「もともとの体ではムリなことを、できるようにする」
こうして自分の言葉に置きかえると、同じ文章が急に「自分ごと」になります。字面をなぞるのではなく、意味をつかんで読むとは、こういうことです。
ただし、その場ではどうしても置きかえられない言葉も出てきます。そんなときは、むりに止まらず、「あとで説明してくれるはず」と覚えておいて先へ進むのもコツです。
説明文の筆者は、難しい言葉を出したあと、たいていその意味をあとの文で説明してくれます。だから、わからない言葉に出会っても「これはあとで回収しよう」と印をつけて進めば大丈夫。むしろ、わからない一語で立ち止まって固まってしまうほうが、文章全体を見失う原因になります。
例文でも、実はこの「回収」が起きていました。前半に出てきた「体の限界をこえる」という少し難しい言い方。その意味は、最後の一文の「もう一つの体」という分かりやすい言葉で説明され直しています。最初は分からなくても、読み進めれば筆者が答え合わせをしてくれる――そう知っているだけで、難しい言葉への身がまえがぐっとラクになります。
置きかえ+あとで回収
わかる言葉はその場で自分の言葉に翻訳。わからない言葉は覚えておいて、あとの説明で回収。この2つで、難しい語句にペースを乱されなくなります。
3つめは、抽象的な話を、自分が知っている場面に当てはめて読むことです。頭の中を真っ白にして読むのではなく、「これって、あのことだ!」と自分の経験とつなげるのです。
例文の「道具は、もう一つの体だ」という主張。言葉だけだとピンと来なくても、自分の体験に当てはめると一気に腑に落ちます。
自分の体験に当てはめてみる
「そういえば、教室のうしろの席だと黒板の字がぼやけて見えないけど、めがねをかけたらはっきり見えた。あれも『目のパワーアップ』だったのか。」
「冬に半袖だと寒くてこごえるけど、セーターを着たらあたたかく過ごせた。あれも道具のおかげってことか。」
こうして自分の経験という「具体例」を思い浮かべると、抽象的な主張がしっかり記憶に残ります。
ここまでの3つを、実際の読み方の手順にまとめます。
抽象はゆっくり、具体は流す
筆者の主張・まとめの一文はゆっくり噛みしめ、たとえ話や例はサッと流す。速さを切りかえる。(裏ワザ①)
段落の切れ目で立ち止まる
段落を読み終えたら「つまりどういうこと?」と一言でまとめてから先へ進む。(裏ワザ①)
自分の言葉に翻訳する
難しい言い回しは、ふだん使う言葉に置きかえる。置きかえられない語は「あとで回収」と覚えて先へ。(裏ワザ②)
自分の体験を思い浮かべる
抽象的な主張は「これって、あのことだ」と自分の経験に当てはめてイメージする。(裏ワザ③)
だから「読める」ようになる
この3つは、どれも読みながら頭の中でやることです。最初は面倒に感じても、くり返すうちに無意識でできるようになります。そうなれば、初めて見る難しい文章でも、意味をつかみながら読み進められるようになるのです。
SS-1の学習カウンセリングでは、実際のテストの答案やふだんの読みの様子から、お子さんが「読み」のどこでつまずいているかを見きわめたうえで、その子に合った練習法をご提案しています。
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この記事を執筆した講師
田畠 靖大(Tabata Yasuhiro)
中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1(エスエスワン)関東副代表・渋谷教室長。関東にあるSS-1渋谷教室を中心に多くの受験生を指導し、毎年難関中学に送り出しています。担当教科は国語・算数。論理性を重視しながらも、ソフトな語り口でお子様の課題解決に取り組みます。テストでの得点向上のみならず、科目の根本理解、体系理解を実現、得意科目に仕上げていきます。
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