中学受験の国語で成績を上げるための「論説文の線引き」に焦点を当て、線引きが実際に「得点に結びつく読み」に変わるまでの過程と方法を、プロ講師が流れに沿って丁寧にお伝えします。
国語の解き直しをしているとき、お子さんがこう言ったことはありませんか。
「なんだ、抜き出し問題の答え、ここにあったのか」
解答を見れば、ちゃんと納得できる。本文だって読めている。
それなのに、テスト中には見つけられない。
そして、こんなふうに声をかけてはいないでしょうか。
時間をかけて探したのに解き終わらなかった----その苦い経験と、どう解けばいいのか分からないもどかしさから、つい「抜き出しは時間がなくなるから、飛ばしていいよ」と。
もし心当たりがあるなら、この記事はきっとお役に立てます。
抜き出し問題は、「なんとなく探して見つかる」問題ではありません。けれど、答えの場所は「抜き出しの技術」で特定できます。やみくもに探すから見つからないだけで、正しい手順を踏めば、答えのほうから浮かび上がってきます。
この記事では、SS-1の国語指導で実際に使っている抜き出し問題の「3つの裏ワザ」を、例題つきでお伝えします。読み終わるころには、「本当だ、これで解ける」と実感していただけるはずです。
お子さんが抜き出し問題を解いている様子を、想像してみてください。
きっと、本文の最初に戻って、上から目で追いながら「それっぽい言葉」を探しているはずです。見つけたら、字数を数えて、合っていそうなら書く。違ったらまた最初から----。
この解き方には、二つの落とし穴があります。
ひとつは、時間が溶けること。本文をまるごと読み返していたら、1問に何分もかかります。
もうひとつ、こちらが深刻なのですが、「それっぽい言葉」がいくつも見つかってしまうこと。国語の文章は、同じ内容を言い換えながら進みます。だから「これも答えっぽい」「あれも合いそう」という候補が複数出てきて、どれを選べばいいか決められなくなるのです。
つまり、抜き出しを落とすお子さんは、頭が悪いわけでも、読めていないわけでもありません。「探し方」を知らないまま、運だのみで探しているだけなのです。
ここを変えれば、点数は変わります。
まず、出題者の側から抜き出し問題を眺めてみましょう。じつは抜き出し問題は、出題者がわざと"ヒント"を埋め込んで作っています。
次の例題をご覧ください。
例題① 本文(論説文)
便利になることは、必ずしも人を豊かにするとは限らない。私たちはふだん、新しい道具を手に入れるたびに、暮らしが良くなったと感じる。だが、その「良くなった」の中身を、立ち止まって考えることはほとんどない。
たとえば、スマートフォンの地図アプリを思い浮かべてほしい。知らない街でも、画面の矢印にしたがって歩けば、目的地まで一度も迷わずにたどり着ける。かつてのように、駅前の地図を書き写したり、すれちがう人に道をたずねたりする必要はもうない。だが、その便利さと引きかえに、私たちは見知らぬ路地に迷いこみ、思いがけない店や風景に出会うという経験を手放してしまった。迷うからこそ出会えたものが、たしかにあったのである。
つまり、便利な道具は時間や手間を省いてくれる一方で、手間の中にあった豊かな経験をうばってしまうこともあるのだ。とはいえ、いまさら道具を捨てる必要はない。大切なのは、何を道具に任せ、何を自分の手に残すのかを、自分自身で選び取る姿勢なのである。
例題① 設問
問 ----線部①「便利になることは、必ずしも人を豊かにするとは限らない」とありますが、なぜですか。それを説明した次の文の空らんに当てはまる言葉を、本文中から十三字で抜き出しなさい。
便利な道具は時間や手間を省いてくれるが、その手間の中にあった( 十三字 )こともあるから。
設問のつくりに注目してください。二つの仕掛けが隠れています。
ひとつめは、字数指定。「十三字で」と指定されています。
ふたつめは、要約文。「便利な道具は時間や手間を省いてくれるが......」という一文です。これは、本文の内容を言いかえて、空らんの位置に答えがくるように作られた文です。
なぜ出題者は、こんな手間をかけるのでしょうか。
ポイント
字数と要約文は、「答えの場所を指定するため」にあります。
本文には「経験を手放してしまった」「豊かな経験をうばってしまう」など、答えになりそうな言葉が複数あります。そのまま「抜き出せ」と言えば「こっちも正解では?」という反論が成り立ち、問題として成立しません。
そこで出題者は、字数と要約文で場所をピンポイントに指定し、こう試しているのです。
「たまたま見つけられたか」ではなく「本文を正しく読み、場所を論理的に特定できるか」----。
つまり、要約文は出題者が置いた"ヒントのかたまり"。これを逆手に取るのが、次の裏ワザです。
検索語とは
設問の要約文の中で、空らんの"すぐ前後"に置かれた言葉のこと
要約文は本文を言いかえて作られています。ということは----空らんの前後にある言葉は、本文の「答えのすぐ近く」にも必ず顔を出しているはずです。
だから、空らんの前後の言葉を"検索ワード"にして本文を探せば、答えまで一直線。インターネット検索で、的確なキーワードを入れれば一発で目的のページにたどり着くのと同じ理屈です。
検索語になるのは、名詞や動詞だけではありません。接続語(つなぎ言葉)が決定打になることがよくあります。
接続語のペアの法則
要約文と本文では、接続語は言いかえられても"同じ仲間(グループ)"でペアになります。接続語は、働きで分けるとたった4つのグループに整理できます。「だが」とあれば本文の「しかし」を、というように、同じグループの言葉どうしを結びつけて探せばよいのです。
| グループ | はたらき | 仲間の言葉(例) |
|---|---|---|
| 言いかえ | 前と後が同じ内容を表す | つまり/要するに/すなわち |
| 対比 | 前と後が正反対の内容 | しかし/けれども/だが/それに対して/一方 |
| 並列 | 前と後が別の話題を並べる | そして/また/さらに/しかも/加えて |
| 因果 | 前と後が原因と理由の関係 | だから/したがって/なぜなら |
さきほどの例題①の要約文を見ると、空らんの直前に逆接の「が」がありました。これは対比グループ。だから本文の答えの近くにも、同じ対比グループの「しかし」「一方」などがあるはず----とアタリをつけられるのです。設問に接続語があったら、必ず検索語に加えてください。
論説文には、もうひとつ知っておくと圧倒的に有利になる"型"があります。
筆者は多くの場合、傍線部(言いたいこと)→ 具体例 → 言いたいことのまとめという順番で文章を組み立てます。具体例という「具」を、筆者の抽象という「パン」で上下からはさんでいる----この形から、SS-1ではこれを「サンドイッチ構文」と呼んでいます。傍線部の多くは、この「パン」の部分に引かれます。
例題①も、きれいなサンドイッチでした。
サンドイッチの使い方
「たとえば」で始まる具体例が終わった直後----多くは「つまり」「このように」で始まる部分----に、答えとなるまとめの一文がくることが非常に多いのです。具体例の中ではなく、それをはさむ「パン」に目を向けるのがコツです。
3つめの裏ワザは、知っている子がほとんどいない、とっておきです。
本文を読みながら傍線部を追っていくと、ときどき、ぽっかりと穴があいたように傍線のない区間に出くわすことがあります。前にも後ろにも傍線が引かれているのに、なぜかそこだけ素通り----。
じつは、この"空白地帯"にこそ、答えがひそんでいる可能性が高いのです。
なぜ空白地帯に答えがあるのか
理由は単純です。出題者は、文章の重要な箇所に傍線を引いて設問を作ります。しかし、答えの根拠になる部分にだけは、傍線を引けません。引いてしまったら、答えの場所を受験生に教えてしまうからです。
その結果、「明らかに大事なことが書いてあるのに、傍線だけがない場所」が生まれます。それが空白地帯----いわば、出題者が答えを隠した金庫なのです。
実際の文章で確かめてみましょう。今度は少し長めの例題です(説明のために作成した文章です)。
例題② 本文
本文の傍線の配置を、地図にしてみます。
前後にはびっしり傍線が引かれているのに、第3段落だけ、ぽっかりと素通りされています。「しかし」で話が転換し、「つまり」で筆者の主張がまとめられている、明らかに重要な段落なのに----です。
この不自然さこそがサイン。「ここに答えの根拠があるから、出題者は傍線を引けなかった」と読むのです。実際に設問を見てみましょう。
例題② 設問
問 ----線部③「すぐれた研究者ほど、失敗の記録をたからもののように保管している」とありますが、なぜですか。それを説明した次の文の空らんに当てはまる言葉を、本文中から十二字で抜き出しなさい。
研究者にとって失敗は、( 十二字 )だと言えるから。
検索語は「失敗は」「だと言える」。これを、あの空白地帯=第3段落に当てて探すと----
本文・第3段落
つまり失敗とは、人を成長させる最大の教材なのである。
要約文の「失敗は......だと言えるから」に対して、本文は「失敗とは......なのである」。言い方は変わっていますが、「AはBだ」と言い切る同じ形が、空白地帯のまとめの一文にぴたりと重なっています。
赤色にはさまれた「人を成長させる最大の教材」はちょうど十二字。空らんに入れると「研究者にとって失敗は〈人を成長させる最大の教材〉だと言えるから」----完璧に通ります。これが答えです。
傍線③について問われているのに、答えは傍線のない第3段落にある。設問の傍線部と答えの場所は別----そして答えの場所は、傍線の「空白」が教えてくれる。これが3つめの裏ワザです。
ここまでの道具を、実戦の手順にまとめます。
だから抜き出しは得点源になる
抜き出し問題は、「もしかしたら合っているかも」があまりない形式です。⑤まで進めば、合っているかどうか、その場で自分で確かめられる。つまり、手順を身につけた子にとっては、テスト中に「確実に取れた」とわかる、数少ない問題なのです。
では、5ステップで例題①を解いてみましょう。赤色=検索語、青色=答えの候補です。
①検索語をつかむ/②入る言葉を想定/③字数確認
設問の要約文
便利な道具は時間や手間を省いてくれるが、その手間の中にあった( )こともあるから。
検索語は「時間や手間を省いてくれる」「手間の中にあった」、そして逆接の「が」(対比グループ)。
空らんは「( )こともあるから」と続き、しかも「便利なのに〜」という対比の流れですから、入るのは「〜してしまう」のようなマイナスの内容だろうと見当をつけられます。字数は十三字です。
④検索語で探す+サンドイッチを調べる
本文をもう一度、最初から見てみましょう。検索語が集まっているのは----「たとえば」の具体例が終わった直後、「つまり」で始まる最終段落です。
本文
便利になることは、必ずしも人を豊かにするとは限らない。私たちはふだん、新しい道具を手に入れるたびに、暮らしが良くなったと感じる。だが、その「良くなった」の中身を、立ち止まって考えることはほとんどない。
たとえば、スマートフォンの地図アプリを思い浮かべてほしい。知らない街でも、画面の矢印にしたがって歩けば、目的地まで一度も迷わずにたどり着ける。かつてのように、駅前の地図を書き写したり、すれちがう人に道をたずねたりする必要はもうない。だが、その便利さと引きかえに、私たちは見知らぬ路地に迷いこみ、思いがけない店や風景に出会うという経験を手放してしまった。迷うからこそ出会えたものが、たしかにあったのである。
つまり、便利な道具は時間や手間を省いてくれる一方で、手間の中にあった豊かな経験をうばってしまうこともあるのだ。とはいえ、いまさら道具を捨てる必要はない。大切なのは、何を道具に任せ、何を自分の手に残すのかを、自分自身で選び取る姿勢なのである。
----いかがでしょうか。
設問の要約文と、本文の最終段落。赤色の言葉が、ほとんどそのまま並んでいるのがわかりますか。
しかも、要約文の逆接「が」(対比グループ)に対して、本文では同じ対比グループの「一方で」がきちんと対応しています。接続語のペアの法則どおりです。
ここで注意。2段落目(具体例)にも「経験を手放してしまった」という答えになりそうな言葉がありました。やみくもに探す子は、ここに飛びついて失点します。しかし検索語が集まっているのは最終段落(まとめのパン)。サンドイッチ構文の「答えはまとめのパンに多い」という見方からも、最終段落が正解だと判断できます。
⑤入れてチェック
赤色にはさまれた青色の部分「豊かな経験をうばってしまう」はちょうど十三字。空らんに入れてみると----
「その手間の中にあった〈豊かな経験をうばってしまう〉こともあるから」
すんなり読めます。違和感なし。これが答えです。
いかがでしょうか。やみくもに探していたときとは、まるで別の競技だとお分かりいただけたと思います。「検索語」(接続語・言いかえもふくむ)で"場所"を特定し、「サンドイッチ構文」と「傍線部の空白地帯」で場所のアタリをつけ、字数で"答え"を確定し、最後に入れて確かめる。----この3つの裏ワザは、論説文でも物語文でも同じように使えます。
※本記事の例題は、解き方を説明するために編集部が作成したものです。実際の入試問題を使った演習・解説は、SS-1の授業内で行っています。
ここまでお読みいただいた保護者の方から、よくこんなご質問をいただきます。
よくいただくご質問
「抜き出し問題は、 文章を読む前に最初に確認した方がいいのですか?
それとも 傍線部が出てくるたびに確認した方がいい?
あるいは 文章を全部読み終えてから取り組むべきでしょうか?」
実はこれ、「正解」がお子さんによって違うのです。読むスピード、ワーキングメモリの強さ、先に設問を見ると本文が頭に入らなくなるタイプかどうか----。同じ解法でも、どのタイミングで使うのが最適かは、その子の答案の癖を見なければ判断できません。
SS-1の学習カウンセリングでは、実際のテストの答案やふだんの問題用紙への書き込みを講師が拝見し、お子さんの解き方の癖を分析したうえで、いちばん点数につながる手順とタイミングをご提案しています。
「うちの子はどのタイプ?」と気になった方は、ぜひ一度、答案をお持ちのうえでお越しください。この記事でお伝えした「検索語」「サンドイッチ構文」「傍線部の空白地帯」の3つの裏ワザを、お子さん仕様にチューニングしてお返しします。
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この相談に答えた講師
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