中学受験において、小学5年生の後半は非常に重要な時期です。 6年生になると、志望校別対策や過去問演習、実戦的な問題演習が本格化していきます。...
答案用紙が返ってきて、毎回記述が白紙だったり、半分以下の点数しかもらえなかったり......そんなお子さんは多いのではないでしょうか。
よくいただくご相談
「記述で点数が取れたら、もっと成績が上がるのに......」
そう感じている保護者の方は、少なくないはずです。漢字も読解もがんばっている。けれど、記述だけはなかなか点にならない。
そして、こんなふうに声をかけてはいないでしょうか。
「なんでもいいからとりあえず書きなさい」「もっと本文をよく読めば書いてあるでしょ」――。このような抽象的なアドバイスは大人には理解できても、子どもには響かないことがほとんどです。
やる気も読解力も、もちろん大切です。ただ、記述にはそれとは別に、知っているかどうかだけで差がつく「書き方のルール」があります。やみくもに思いついた順に書くから点にならないだけで、正しい手順を踏めば、ちゃんと半分以上の点数が取れるようになります。そこで、記述が簡単に書けるようになる3つの裏ワザをご紹介します。SS-1の国語指導で実際に使っている方法を、例題つきでお伝えします。読み終わるころには、「記述って、こう書けばよかったのか」と実感していただけるはずです。
お子さんが記述問題を解いている様子を、想像してみてください。きっと、本文の中から答えになりそうなところを抜き出して、そのまま答案用紙に書き始めているはずです。ごく自然な解き方に見えますが、実はここに、点数が取れない原因がひそんでいます。理由は、大きく3つあります。
そうだったの!? ①「そもそも書き方が学校ごとに違う」
記述には、本文の言葉をそのまま使ってよいタイプと、自分の言葉でまとめ直すタイプの2種類があり、学校によってどちらを求めるかが違います。同じ「記述」でも、正解の書き方が別物なのです。ここを取りちがえると、どれだけ書いても評価されません。
そうだったの!? ②「記述の要素を"書く順番"で点が変わる」
記述の要素となる言葉を先頭から順に書き出すと、関係のない言葉に字数を取られ、いちばん大事な結論を書くスペースが残らなくなります。同じ内容を知っていても、書く順番ひとつで、点が取れる子と取れない子に分かれるのです。
そうだったの!? ③「本文にある言葉なのに、書くと減点される」
本人は「本文に書いてあったから合っているはず」と思っているのに、そのまま書くと減点される言葉があります。これを知らないと、気づかないうちにじわじわ点を削られてしまいます。
つまり、記述で点が取れないお子さんは、読解力がないわけでも、読めていないわけでもありません。①型、②書く順番、③書いてはいけない言葉――この3つを知らないまま、思いつきで書いているだけなのです。裏を返せば、この3つを押さえれば点は変わります。それが、これからご紹介する3つの裏ワザです。
最初の裏ワザは、解き始める前に知っておきたいことです。じつは記述には、大きく分けて2つの型があります。まずはこれを知っておくだけで、対策の方向が定まります。
記述の2つの型
①抽象化型記述......本文の内容を、自分なりの言葉でまとめ直して作る記述。
②加工型記述......本文中の表現を取り出して、つなぎ合わせて作る記述。抜き出し問題に近い作業です。
そして重要なのは、どちらの型を求めるかは、学校によって違うということです。
男子御三家・女子御三家をはじめとする難関校では、抽象化型記述が多く出されます。一方、その他の多くの学校では、加工型記述が採用されるケースが目立ちます。
これに合わせて、集団塾のテストも、塾のコンセプトに沿って記述の型を変えています。最難関校を目指すサピックスやグノーブルでは抽象化型が、四谷大塚や日能研では加工型が採用される傾向にあります。
| 型 | 作り方 | 多く見られる場面(例) |
|---|---|---|
| 抽象化型 | 自分の言葉でまとめ直す | 男女御三家など難関校/サピックスオープン・グノレブ など |
| 加工型 | 本文表現を取り出しつなげる | その他の多くの学校/組分けテスト・日能研公開模試 など |
その場ですぐ使える見分け方があります。それは設問文のなかに「文章中の言葉を使って」という指示があるかどうかです。
この一文があれば、出題者は本文の表現を取り出してつなげることを求めています。つまり加工型のサインです。逆に、こうした指示がなく「説明しなさい」「どういうことですか」とだけ問われている場合は、抽象化型――自分の言葉でまとめ直すことを期待している可能性が高いと判断できます。設問を読んだら、まずこの一文があるかどうかをチェックするクセをつけましょう。
まずここを確かめる
お子さんの受ける学校・受けているテストが、どちらの型なのか。過去問や模試の模範解答を見て、「本文の言葉がそのまま使われているか(=加工型)」「言い換えられているか(=抽象化型)」を、一度確かめてみてください。
2つめは、どちらの型にも共通して効く、書き順の裏ワザです。ひとことで言えば――「後ろ(結論)から考える」ことです。
記述の答えは、たいてい「結論に、いくつかの理由(あるいは対比)が付け加わった形」で書かれます。文章の論理も、これと同じように進みます。たとえば「A(対比)だが、B(理由)だからC(理由)ゆえにD(結論)である」といった具合です。
では、なぜ後ろ(結論)から考えるとよいのでしょうか。理由は2つあります。
「AだがB......」と先頭から書き始めると、途中に余計な言葉が挟まれて、字数制限内に収まらなくなります。するといちばん大事な結論が書けずに終わり、大幅な減点、もしくは×になってしまうのです。
そこで、先に結論を置いてから「その理由は何だっけ?」とさかのぼる。こうすれば、最重要の結論が抜け落ちることはありません。
結論となる核の部分は、比較的見つけやすいのに対して、それを支える理由は文章のあちこちに点在しています。だから、末端の理由や対比を探すのは、実はとても難しいのです。
なんとなく書き始めると、それが因果の途中だったり、まったく関係ない内容だったりして、記述の枠を無駄に埋めたり、構成が崩れたりします。だからこそ、結論を先に決める癖が必要なのです。
おすすめの練習法
いきなり答案用紙に書き出さず、まずは余白に箇条書きで。「①結論はこれ」→「②その理由は?」→「③さらにその理由は?」→「④その対比は?」と、結論から順にメモします。書けたら、それをひっくり返して(後ろから前へ)文章にするだけ。これで、きれいな構成の記述が自然に出来上がります。
記述には、本文に書いてあっても、そのまま書いてはいけない言葉があります。
筆者が「たとえば......」と挙げる例は、あくまで説明のための一例にすぎません。そこから一つだけ拾ってきて書くと、答えとして成立しなくなります。次を見てください。
本文(論説文)
道具は、人の能力を外へ広げてくれる。たとえば、望遠鏡は人の目を遠くまで届かせ、自動車は人の足を速くした。こうして人は、生まれ持った体の限界をこえて、世界とかかわれるようになったのである。
問題
人の能力を外へ広げるとはどういうことですか。
✕ 具体例をそのまま拾った記述
「望遠鏡が目を遠くまで届かせてくれること。」
→ 望遠鏡「だけ」の話になってしまい、筆者の言いたい「体の限界をこえる」という中身が抜け落ちています。
解答例
生まれ持った体の限界をこえて、世界とかかわれるようになるということ。
学校によっては比喩をそのまま使ってよい場合もありますが、集団塾のテストでは、基本的に比喩は言い換えるのが原則です。そのまま書くと、意味が文字どおりに受け取られて、記述が成立しません。
本文(物語文)
合格発表の掲示板に自分の番号を見つけたとき、まるで背中に羽が生えて、そのまま空の彼方へ浮かび上がってしまいそうな気持ちになった。
問題
合格発表の掲示板に自分の番号を見つけたときの気持ちを答えなさい。
✕ 比喩をそのまま拾った記述
「背中に羽が生えて、空の彼方へ浮かび上がってしまう気持ち。」
→ 本当に羽が生えて、浮かび上がったわけではありませんよね。読み手には、主人公がどんな気持ちなのか伝わらないままです。
解答例
合格したことでいままでの不安や重圧から解放され、大きな喜びと達成感を抱く気持ち。
「これ」「それ」「あれ」「どれ」といった指示語は、文章中の言葉を指しているだけなので、記述に取り出しても何を指すのか読み手には伝わりません。「あれがそれでそうなったから。」で丸がもらえるはずがありませんよね。ところが、小学生の記述には指示語がそのまま残っていることが、意外なほど多いのです。
本文(物語文)
転校初日、たくみは教室で一人ぼっちだった。すると、となりの席の子が「いっしょに帰ろう」と声をかけてくれた。それが、たくみにはとてもうれしくて、放課後までそわそわしていた。
問題
たくみが放課後までそわそわしていたのはなぜですか。
✕ 指示語をそのまま残した記述
「それがうれしかったから。」
→ 「それ」が何なのか、本文を読んでいない採点者には伝わりません。
解答例
「一人ぼっちの自分に、となりの席の子が声をかけてくれたことがうれしかったから。」
→ 「それ」が指す中身を、きちんと言葉にできています。
最後は「あいまい語」。それ単体では、読み手が意味を理解できない言葉のことです。たとえば「あいつは『小学五年生』だから仕方がない」と書かれても、なぜ仕方がないのか、読み手にはまったく伝わりません。小学生は「自分が読んだものは、当然相手も知っている」と思い込みがちで、この落とし穴を見落とします。
本文(物語文)
話しかけてきたのが明里だったので、りくはほっとした。明里は、クラスでただ一人、りくが転校生だったころから分けへだてなく接してくれた友だちだった。
問題
りくが安心したのはなぜですか。
✕ あいまい語のままの記述
「話しかけてきたのが明里だったから。」
→ 「明里」がどんな人物かが書かれていないため、なぜ安心したのかが伝わりません。本文には書いてあるのに、記述には明記されていない状態です。
解答例
「話しかけてきたのが、昔から分けへだてなく接してくれた明里だったから。」
+ 接続語にも注意
記述の書き出しでいきなり「しかし」「だから」と始めるのも、あいまい語の仲間です。何に対しての「しかし」なのかが伝わらないため、突然の接続語には気をつけましょう。
ここまでの道具を、実戦の手順にまとめます。
だから記述は得点源になる
記述は部分点がある形式です。結論を一言書けるだけでも点になり、そこに理由や対比を足すほど点が伸びます。手順を身につけた子にとって、記述は「書けば書くほど積み上がる、いちばん伸ばしやすい問題」なのです。
よくいただくご質問
「うちの子の志望校が、どちらの型なのか判断できない......」
「そもそも文章が読めていなくて『結論』を探すことができない......」
「言い換える言葉の語彙力がなくて、途中でペンが止まってしまう......」
汎用性のある裏ワザといっても、細かく課題を分析するといろいろなつまずきポイントが見えてくるものです。まだ裏ワザを使えるレベルにない場合でも、ちょっと思考を変えるだけで問題が簡単に解けるようになったお子さんもたくさんいらっしゃいます。
SS-1の学習カウンセリングでは、実際のテストの答案やふだんの問題用紙への書き込みを講師が拝見し、お子さんが記述のどこでつまずいているかを見きわめたうえで、お通いの塾に合った練習法をご提案しています。
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テストの成績・答案をお持ちいただければ、国語の専門講師が「なぜその記述が△だったのか」「どう書けば◯になるのか」をその場で分析し、お子さんに合った勉強法をご提案します。
答案を持って相談してみる
お子さんが記述のどこでつまずいているかを見つけて、次の一手をお返しします。気になった方は、ぜひ一度、答案をお持ちのうえでお越しください。

この記事を執筆した講師
田畠 靖大(Tabata Yasuhiro)
中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1(エスエスワン)関東副代表・渋谷教室長。関東にあるSS-1渋谷教室を中心に多くの受験生を指導し、毎年難関中学に送り出しています。担当教科は国語・算数。論理性を重視しながらも、ソフトな語り口でお子様の課題解決に取り組みます。テストでの得点向上のみならず、科目の根本理解、体系理解を実現、得意科目に仕上げていきます。
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