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【中学受験】よかれと思った一言が、子どものやる気を奪っている?あるある8場面のNG声かけとOK声かけ

最終更新
カテゴリー:勉強方法
【中学受験】よかれと思った一言が、子どものやる気を奪っている?あるある8場面のNG声かけとOK声かけ

「悔しいなら頑張りなさい」「なんで勉強を始めないの」「〇〇ちゃんはもう始めているって」――。中学受験をしているご家庭なら、一度は口にしたことがある言葉ではないでしょうか。

どれも、わが子を思うからこそ出てくる言葉です。言っていることも、まちがってはいません。それなのに、子どもは動かない。むしろ、言えば言うほどやる気を失っていくように見える――。そんな経験はありませんか。

じつは、同じ一言でも、子どもによって「やる気が出る言葉」にも「やる気を奪う言葉」にもなります。そのちがいを生んでいるのが、子ども一人ひとりが持っている「やる気のスイッチ」のタイプです。この記事では、中学受験でよくある8つの場面ごとに、タイプ別のNG声かけとOK声かけをご紹介します。

1. 同じ一言で、やる気が出る子と、やる気をなくす子がいる

まず、ある2つの家庭を想像してみてください。Aくんの家庭と、Bさんの家庭です。どちらの家庭でも、子どもの模試の結果が、仲の良い同級生の〇〇くんより低かった場面です。

同じ一言、正反対の反応

それぞれの家庭で、親がわが子に同じ言葉をかけました。「〇〇くんには負けたくないでしょ。次は勝てそう?」

Aくんは、表情を変えて「次は絶対に勝つ」と言いました。その日のうちに、間違えた問題を自分から解き直し始めました。

Bさんは、「〇〇くんみたいにはできないよ......」と下を向きました。「お母さんをがっかりさせてしまった」と感じて、その日はほとんど話をしませんでした。

まったく同じ言葉なのに、Aくんはやる気になり、Bさんはやる気をなくしてしまいました。Aくんにとって〇〇くんは、勝ちたい「ライバル」です。だから勝負をうながす一言が、そのままやる気につながりました。一方、Bさんは同じ言葉を「比べられた」「期待に応えられていない」と受け取ったのです。

反対の場合もあります。たとえば「一緒にやろうか」という一言は、Bさんには「見てくれている」という安心になり、机に向かうきっかけになります。けれどAくんには「自分でできるのに」という反発を生み、かえってやる気を失わせることがあります。

つまり、声かけで大切なのは「何を言うか」以上に、「その子が、何のためなら頑張れるのか」を知ることなのです。

2. 子どものやる気のスイッチは、大きく2つのタイプ

子どもが勉強に向かうときの「やる気の源」は、大きく2つのタイプに分けて考えることができます。

負けず嫌いタイプ

やる気の源は、自分の中にあります。「勝ちたい」「できる自分でいたい」「自分のことは自分で決めたい」という気持ちが、頑張る力になるタイプです。

ゲームで負けるともう1回と言い出す、自分でルールや目標を決めたがる、人に言われてやるのが嫌い――そんな姿に心当たりがあれば、このタイプの傾向が強いかもしれません。

反対に、人から指示されたり、自分で決める余地を奪われたりすると、やる気を失いやすいのが特徴です。

期待に応えたいタイプ

やる気の源は、自分以外の誰かとのつながりにあります。「喜んでほしい」「がっかりさせたくない」「頼りにされたい」という気持ちが、頑張る力になるタイプです。

「ありがとう」と言われると張り切る、好きな先生の教科はぐんと伸びる、言われたことはきちんとやる、人とぶつかるのは苦手――そんな姿に心当たりがあれば、このタイプの傾向が強いかもしれません。

反対に、がっかりされたり、突き放されたりすると、やる気を失いやすいのが特徴です。大きなことを「自分で決めなさい」と丸投げされると、不安で動けなくなることもあります。

ここで大切なのは、どちらのタイプが良い・悪いということはないという点です。また、人は誰でも両方の面を持っていて、「どちらが強く出やすいか」というちがいがあるだけです。子どもによって、響く声かけがちがう。そう考えてみてください。

ここからは、中学受験でよくある8つの場面ごとに、2つのタイプそれぞれへのNG声かけとOK声かけを見ていきます。

3. あるある① テストが返ってきたとき

テストが返ってきた日の夜。点数を見た親も、点数を見せる子どもも、いちばん気持ちが揺れる場面です。だからこそ、ここでの一言がその後のやる気を大きく左右します。

負けず嫌いタイプ:悔しがるのに、勉強しない

このタイプの子は、自分の中に高い目標を持っています。ところが、その目標が高すぎると「どうせ届かない」と感じた瞬間に、やる気を失ってしまいます。悔しがっているのは、やる気がないからではなく、目標が高すぎるからなのです。

NG声かけ

「悔しいと思うなら、頑張って勉強しなさい」
→ 高い目標をあらためて突きつけられるうえに、「人に言われてやる」形になります。自分で決めたい子ほど、言われた瞬間にやる気を失ってしまいます。

「だから言ったでしょ」
→ 負けを親から言い渡されることになり、反発心だけが残ります。

「次は80点を取りなさい」
→ 目標を親が決めてしまうと、それはもう「自分の勝負」ではなくなります。

OK声かけ

「頑張っていたから、絶対に達成できるよ。次の目標、自分で決めてみたら?」
→ 過去の失敗ではなく、次の目標に気持ちを向けられます。目標を自分で決めることで、新しいやる気が生まれます。

「この大問、前回より取れているね」
→ 全体では負けていても、「勝っている部分」を見せると、次も勝ちにいこうとします。

「次はどこで点を取り返したい?」
→ 取り返す場所を自分で選ばせると、それが小さくて具体的な目標になります。

ポイント:小さな目標は、必ず本人に決めさせる。親が決めると、やる気を失ってしまいます。

期待に応えたいタイプ:点数よりも、親の顔色をうかがう

このタイプの子は、評価の物差しが自分の外にあります。テストの結果そのものよりも、「この点数だと怒られる」「この点数だと悲しませる」と、親がどう受け止めるかをいちばん気にしています。点数以外にも、認めてもらえる物差しを作ってあげることが大切です。

NG声かけ

「なんで悔しいと思って、もっと頑張らないの」
→ 「自分に負けて悔しい」という気持ちは、このタイプの子には湧きにくいものです。悔しさを求められても、「責められた」という気持ちだけが残ります。

(点数を見て、ため息をつく)
→ 言葉よりも、親のがっかりした表情がいちばんこたえます。

「何点だった?」
→ 最初に点数を聞くと、「点数こそが自分の評価だ」と受け取ります。

OK声かけ

「前に言っていたここ、できるようになってるね。いいね」
→ 結果だけでなく、過程を見てもらえていることが、何よりの励みになります。

「見直しの印、ちゃんとつけてたね」
→ 言われたことが1つでもできていたら、そこを具体的にほめてあげましょう。

「今回、自分ではどこが一番がんばれたと思う?」
→ 親の評価だけに頼らず、自分で自分を認める練習になります。少しずつ「自分の物差し」が育っていきます。

ポイント:点数に対してだけ評価しない。過程を見て、具体的に認めることが大切です。

4. あるある② 宿題をやらない・後回しにする

「宿題やったの?」は、中学受験の家庭でもっとも多く交わされる言葉かもしれません。けれど、同じ「やらない」でも、その理由はタイプによってまったく違います。

負けず嫌いタイプ:言われるほど、やらない

このタイプの子は、自分のペースで、自分で決めて動きたいと思っています。「やりなさい」と言われてから始めるのは、負けを認めるような気がしてしまうのです。言われる回数が増えるほど、意地になってしまいます。

NG声かけ

「早く宿題をやりなさい」
→ 命令が増えるほど、「言われたからやる」状態を避けようとして、ますます動かなくなります。

「何回言わせるの」
→ 親との「勝ち負け」の構図ができ、宿題そのものから気持ちが離れていきます。

OK声かけ

「今日の宿題、何時から始める?」
→ 始める時間を自分で決めさせると、「自分で決めたこと」として動けます。

「算数と国語、どっちから片づける?」
→ 親は選択肢を出すだけ。選ぶのは本人です。

「昨日は30分で終わったよね。今日は記録更新できそう?」
→ 過去の自分との勝負にすると、宿題にゲーム感覚で取り組めます。

ポイント:決めるのは子ども、親は選択肢を出す役に回る。

期待に応えたいタイプ:やったふりをする・分からないところを飛ばす

このタイプの子は、「分からない」と言うと親や先生をがっかりさせてしまう気がして、なかなか言い出せません。人とぶつかることも苦手なので、分からない問題を飛ばして「終わったよ」と言ってしまうことがあります。

NG声かけ

「自分でやりなさい」
→ 突き放されたように感じ、分からないところを相談できなくなります。

「こんなのもできないの?」
→ 「分からない」と言うことが、ますます怖くなります。

「ほら、言った通りにやったらできたでしょ」
→ できたことが「親の手柄」になり、自分でできたという実感が残りません。

(子どもが話し終える前に、親が答えを言ってしまう)
→ 自分の言葉で説明する機会がなくなり、ますます親を頼るようになります。

OK声かけ

「最初の1問だけ、一緒にやろうか」
→ そばにいてもらえる安心感が、始める力になります。

「「分からない」って言えたの、えらいね」
→ 分からないと言える空気をつくると、つまずきを早めに見つけられます。

「終わったら見せてね。楽しみにしてる」
→ 見てもらえることが、最後までやりきる力になります。

「あなたががんばったから、できるようになったね」
→ できたことを本人の手柄として返すと、「自分でもできる」という自信が育ちます。

ポイント:「分からない」と言っても大丈夫な空気をつくる。

5. あるある③ なかなか勉強を始めない

机に向かうまでが長い。ようやく座ったと思ったら、消しゴムをいじっている。「早く始めなさい」と言いたくなる場面ですが、始められない理由はタイプによって違います。

負けず嫌いタイプ:勝てない勝負は、始めない

このタイプの子は、勝てそうな勝負には意欲を見せますが、負けが見えている勝負には手をつけようとしません。苦手な単元や難しい問題を前にすると、「やってもできない自分」を見たくなくて、始めるのを先送りにしてしまいます。

NG声かけ

「いつまでダラダラしてるの」
→ 責められるほど、自分を守るために動かなくなります。

「そんなことじゃ受からないよ」
→ 「負け」を先に宣告されると、勝負そのものを降りてしまいます。

OK声かけ

「まず、この5問だけやってみる?」
→ 最初の一歩を「勝てるサイズ」に小さくすると、動き出せます。

「この問題、何分で解けるか測ってみようか」
→ 時間との勝負にすると、ゲーム感覚で始められます。

ポイント:最初の一歩は「勝てるサイズ」にする。

期待に応えたいタイプ:一人だと、始められない

このタイプの子は、誰かのため、誰かと一緒なら動けます。逆に、一人きりで「さあ、やりなさい」と言われると、何のためにやるのかが見えず、なかなか動き出せません。

NG声かけ

「勉強しないなら、塾をやめなさい」
→ つながりを切られるような言葉は、このタイプの子がいちばん恐れるものです。

「もう勝手にしなさい」
→ 見放された気持ちになり、ますます動けなくなります。

OK声かけ

「お母さんもここで仕事するから、一緒にやろう」
→ 同じ空間に誰かがいるだけで、始める力が湧いてきます。

「始めたら声をかけてね」
→ 見守ってくれる人がいることが、背中を押します。

ポイント:「一人にしない」ことが、勉強を始めるきっかけになる。

6. あるある④ 模試の成績が下がった

模試の結果は、親にとっても子どもにとっても重いものです。下がったときこそ、親の一言がその後の数か月を左右します。

負けず嫌いタイプ:言い訳をする

このタイプの子は、負けを認めるのが苦手です。「今回は問題が変だった」「たまたまだよ」と言い訳をするのは、反省していないからではなく、負けた自分を受け入れるのに時間がかかっているからです。

NG声かけ

「言い訳しないの」
→ 正面から否定されると、ますます意地になり、本当の反省から遠ざかります。

「〇〇くんは上がったのにね」
→ 負けをもう一度突きつけられ、気持ちが折れてしまいます。

OK声かけ

「どこで点を落としたか、作戦会議しよう」
→ 負けを責めるのではなく、次に勝つための材料に変えられます。

「次の模試で、ここだけは取り返そう。どこにする?」
→ 取り返す場所を自分で選ぶことで、次の勝負に気持ちが向かいます。

ポイント:負けを責めずに、「次の勝ち筋」に変える。

期待に応えたいタイプ:結果を隠す・すぐに謝る

このタイプの子は、結果が悪いと「がっかりさせてしまう」という気持ちが先に立ちます。結果を見せるのを先延ばしにしたり、見せた瞬間に「ごめんなさい」と謝ったりするのは、そのためです。

NG声かけ

(無言・ため息)
→ 言葉がない分、親のがっかりした気持ちがいちばん伝わってしまいます。

「せっかく塾に通わせているのに」
→ 申し訳なさが重なり、次から結果を見せにくくなります。

OK声かけ

「見せてくれてありがとう」
→ まずは、結果を見せてくれた行動そのものを受け止めましょう。

「下がったときこそ、伸びるところが見つかるよ」
→ 結果が悪くても関係は変わらない、という安心感が、次に向かう力になります。

「自分では、どのあたりが難しかった?」
→ 責めずに聞くことで、本人が自分の言葉で振り返れるようになります。

ポイント:まず、結果を見せてくれたことを受け止める。

7. あるある⑤ クラスが落ちた・クラス替え

塾のクラス替えは、子どもにとって自分の位置がはっきり見える出来事です。クラスが下がったとき、子どもの心の中では大きなことが起きています。

負けず嫌いタイプ:プライドが傷つき、投げやりになる

このタイプの子は、クラスが下がると「負けた」と強く感じます。「どうせ」「もういいよ」と投げやりになるのは、それだけ悔しいからです。

NG声かけ

「ほら、やらないからでしょ」
→ 傷ついたプライドに追い打ちをかけ、立ち直りを遅らせます。

OK声かけ

「上のクラスに戻るには、何点必要か調べてみよう」
→ 悔しさを、具体的な「勝ちの条件」に変えられます。

「戻るための作戦、自分で立ててみて」
→ 作戦を自分で立てることで、悔しさが次の勝負へのやる気に変わります。

ポイント:悔しさを、具体的な目標に変える。

期待に応えたいタイプ:友達や先生と離れるのがつらい

このタイプの子にとって、クラスは「人とのつながり」の場所です。クラスが変わることで、仲の良い友達や好きな先生と離れるさみしさ、そして「親に申し訳ない」という気持ちを抱えています。

NG声かけ

「恥ずかしいから、人には言えないね」
→ 親の体面を気にする言葉は、「親をがっかりさせた」という気持ちを強めます。

OK声かけ

「新しいクラスの先生、どんな人だった?」
→ 新しい場所での人とのつながりに目を向けさせると、前向きになれます。

「クラスがどこでも、あなたががんばっていることは知ってるよ」
→ 所属が変わっても、親との関係は変わらないという安心を伝えましょう。

ポイント:クラスが変わっても、関係は変わらないと伝える。

8. あるある⑥ 志望校の話をするとき

志望校選びは、受験生活のやる気を左右する大きなテーマです。ここでの声かけ次第で、志望校が「自分の目標」にも「親の期待」にもなります。

負けず嫌いタイプ:親が決めた学校では、本気になれない

このタイプの子は、自分で決めた目標にこそ本気になります。親が決めた学校は、どんなに良い学校でも「自分の勝負」にはなりません。

NG声かけ

「この学校にしなさい」
→ 決められた目標では、本気になれません。

「あなたにはここが合っているから」
→ 親の判断を押しつけられたと感じ、反発につながることがあります。

OK声かけ

「文化祭に行ってみて、どこが良かった?」
→ 自分の目で見て選んだ学校は、強い目標になります。

「どこに行きたいか、最後に決めるのはあなただよ」
→ 決める権利を渡すことが、何よりのやる気になります。

ポイント:自分で選んだ目標にこそ、本気になる。

期待に応えたいタイプ:親の希望を、自分の希望だと言ってしまう

このタイプの子は、親の期待を敏感に感じ取ります。そのため、親が望んでいる学校を「自分もそこに行きたい」と言ってしまうことがあります。本音を言えないまま受験期を迎えると、苦しい場面で踏んばれなくなります。

NG声かけ

「ここに受かったら、おばあちゃんも喜ぶね」
→ 期待が重なるほど、プレッシャーが大きくなります。

「お父さんの母校に行ってほしいな」
→ 親の希望が、そのまま子どもの志望理由にすりかわってしまいます。

OK声かけ

「どこを選んでも、応援しているよ」
→ どの学校でも見捨てられない、という安心があってはじめて、本音が言えます。

「学校見学で、あなたが一番楽しそうだったのはどこ?」
→ 本人の気持ちを少しずつ引き出すことで、自分の言葉で志望校を語れるようになります。

ポイント:「親の期待」が志望理由にすりかわっていないか、確かめる。

9. あるある⑦ ケアレスミスが減らない

「分かっていたのに」というケアレスミスは、親から見るといちばんもどかしいものです。けれど、ミスに対する子どもの受け止め方も、タイプによって違います。

負けず嫌いタイプ:ミスを軽く考え、見直しを嫌がる

このタイプの子は、「本当は解けていた」と考えて、ミスを負けとして認めたがりません。見直しをしないのも、地道な確認より次の問題に勝ちにいきたいからです。

NG声かけ

「またケアレスミス?ちゃんと見直しなさい」
→ 言われたからやる見直しは、長続きしません。

OK声かけ

「ミスがなかったら、何点だった?」
→ 取れたはずの点数を見せると、「取り返せる勝ち」として意識できます。

「次は、見直しで何点取り返せるか試してみよう」
→ 見直しを、点数を取り返すための勝負に変えられます。

ポイント:ミスを「取り返せる点数」として見せる。

期待に応えたいタイプ:ミスを怖がって、萎縮してしまう

このタイプの子は、ミスを叱られることを恐れて、慎重になりすぎることがあります。その結果、時間が足りなくなったり、焦ってさらにミスが増えたりします。

NG声かけ

「なんでこんな簡単な問題を間違えるの」
→ ミスへの恐怖が強まり、ますます萎縮してしまいます。

OK声かけ

「自分でミスに気づけたのは、すごいね」
→ ミスに気づけたことを認めると、見直しへの前向きな気持ちが育ちます。

「見直しのやり方、一緒に決めようか」
→ 責めるのではなく、一緒に仕組みをつくることで、安心して取り組めます。

ポイント:ミスを責めず、見直しの仕組みを一緒につくる。

10. あるある⑧ 危機感がない・自分の受験だという自覚がない

「もう6年生なのに、のんびりしている」「自分の受験だという自覚が感じられない」。保護者の方から、とてもよく聞く悩みです。けれど、危機感が見えない理由も、タイプによってまったく違います。

負けず嫌いタイプ:あっけらかんとして、危機感がない

このタイプの子にとって、不安や危機感はやる気につながりません。やる気が出るのは、「勝てそうな目標」が目の前にあるときです。親が不安を伝えても「大丈夫だよ」と聞き流してしまうのは、真剣でないからではなく、遠すぎる目標や不安では動けないからなのです。

NG声かけ

「このままじゃ、やばいよ」
→ 不安を伝えても響かず、親の不安だけがふくらんでいきます。

「落ちたら公立だよ」
→ 負けの話を先にされても、勝負する気持ちにはなりません。

OK声かけ

「今月の目標、自分で決めてみない?」
→ すぐ手が届く目標を自分で決めることで、目の前の勝負に気持ちが向きます。

「次のテストで、どこまで上がれそう?」
→ 遠い合格より、近くの勝負を見せるほうが、このタイプの子は動きます。

ポイント:不安を伝えるのではなく、手が届く目標に手を入れる。

期待に応えたいタイプ:自分の受験なのに、どこか他人事

このタイプの子は、誰かの期待や応援を感じて、はじめて頑張れます。「自分の受験でしょ」といきなり主体性を求められても、何のために頑張ればいいのかが見えません。危機感をあおられると、萎縮して自信を失ってしまいます。

NG声かけ

「自分の受験でしょ。自覚を持ちなさい」
→ 大きな主体性を一気に求められると、何をすればいいのか分からなくなります。

「落ちたら公立だよ」
→ 脅しの言葉は、このタイプの子を萎縮させ、自信を奪います。

OK声かけ

「あなたががんばっている姿、ちゃんと見ているよ」
→ 見てくれている人がいることが、頑張る理由になります。

「今週がんばることを1つ、一緒に決めようか」
→ 受験全体のような大きなことを任せるのではなく、身近な目標を一緒に決めることで、少しずつ「自分で決める」経験を積めます。

ポイント:大きな決断は丸投げせず、小さな選択から「自分で決める」経験を積ませる。

11. 声かけがずれる本当の理由は「親のタイプ」にある

ここまで読んで、「わが子に合わない声かけをしていたかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。じつは、声かけがずれてしまうのには、もう1つ大きな理由があります。それは、親自身にもタイプがあるということです。

人はつい、「自分が言われてうれしい言葉」を相手にもかけてしまいます。親と子のタイプが同じなら、気持ちは通じやすいでしょう。けれど、タイプがちがうと、親にとっては最高の励ましが、子どもにとってはやる気を奪う一言になってしまうのです。

親子の組み合わせによって、起こりやすい「ずれ」は変わります。

タイプが逆の親子

負けず嫌いタイプの親 × 期待に応えたいタイプの子
親は「なんで悔しくないの?」「〇〇ちゃんはもっとやってるよ」「落ちたら公立だよ」と、自分ならやる気が出る言葉で奮起をうながします。志望校も、つい親が決めてしまいがちです。けれど子どもには響かず、「自分はだめなんだ」と自信を失っていきます。

期待に応えたいタイプの親 × 負けず嫌いタイプの子
親は心配で、あれこれ口を出します。ところが子どもはあっけらかんとしていて、親の不安だけがふくらみ、ぶつかってしまいます。「どうせあなたには無理でしょ」と決めつけたり、ぶつかるのが嫌で任せきりにしたりするうちに、子どもが自分のやり方で突き進み、手に負えなくなることもあります。

タイプが同じ親子

負けず嫌いタイプの親 × 負けず嫌いタイプの子
お互いに譲らず、意見がぶつかり合います。言い合いの中で思ってもいないことまで口にしてしまい、どちらかが納得しないまま志望校などの大事なことが決まってしまうことがあります。

期待に応えたいタイプの親 × 期待に応えたいタイプの子
ぶつかることは少なく、仲は良好です。けれど、お互いに相手に合わせるため、誰も決めきれないまま話が流れていきます。親がなんでもやってあげてしまい、子どもの自立が遅れたり、実力と離れた志望校を親子とも気づかずに目指してしまったりすることがあります。

タイプが同じだと気持ちが分かり合える一方で、似ているからこそすれ違うこともあるのです。

声をかける前に、ほんの一呼吸。「この言葉は、私がやる気になる言葉だろうか。それとも、この子がやる気になる言葉だろうか」と考えてみてください。それだけで、声かけは大きく変わります。

12. まとめ:やる気のスイッチに合った一言を

子どものやる気を引き出す声かけで、大切なことは次の3つです。

やる気のスイッチに合った声かけのために

負けず嫌いタイプの子には
「決める権利」を渡す。目標も、始める時間も、本人に選ばせましょう。

期待に応えたいタイプの子には
「見ているよ」を伝える。点数だけでなく過程を認めましょう。大きな決断は丸投げせず、小さな選択から「自分で決める」経験を積ませていきます。

親自身は
「自分が言われてうれしい言葉」をそのまま使っていないか、一度立ち止まって考えましょう。

中学受験は、親子で走る長い道のりです。毎日のたった一言が、子どものやる気を育てることも、奪ってしまうこともあります。わが子のやる気のスイッチを知ることは、成績を伸ばすことと同じくらい大切な、受験の土台づくりなのです。

ただし、学年が上がって思春期に入ると、どんな言葉をかけても、親の言葉そのものが届きにくくなる時期があります。そんなときは、無理に親が言い聞かせようとせず、塾の講師など、第三者の口から伝えてもらうのも1つの方法です。

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この記事を執筆した講師
田畠 靖大(Tabata Yasuhiro)
中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1(エスエスワン)関東副代表・渋谷教室長。関東にあるSS-1渋谷教室を中心に多くの受験生を指導し、毎年難関中学に送り出しています。担当教科は国語・算数。論理性を重視しながらも、ソフトな語り口でお子様の課題解決に取り組みます。テストでの得点向上のみならず、科目の根本理解、体系理解を実現、得意科目に仕上げていきます。

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